ウェアプリントの製法を
ぜんぶ解説【前編】
Tシャツやパーカーにプリントする方法は、ひとつではありません。シルクスクリーン、カッティング、DTF、白トナー……。名前は聞いたことがあっても、それぞれの製法が何を得意として、何が苦手なのかを説明できる方は、実はあまり多くありません。
この記事は、当社の東京ショールームに来られた方に毎回お話ししている内容をまとめたものです。代表的な8つの製法のうち、前編ではシルクスクリーン・カッティング・溶剤プリント・DTFの4つを、仕組み・得意なロット・色・設備投資の目安・活躍している業界から解説します。
この記事は前編です(シルクスクリーン・カッティング・溶剤プリント・DTF)。昇華プリント・ガーメントプリント(DTG)・白トナー・刺繍は後編で解説しています。
- 機械を買う前に製法の全体像を知っておくと、「やりたいこと」と「機械ができること」のミスマッチを防げる
- シルクスクリーンは版を作って刷る王道の製法。少ない色数で大量生産が得意で、小ロットやフルカラーは苦手
- カッティングは版がいらず1枚から単色で割安。洗濯にも強く、スポーツの背番号で定番。カス取りの手間がある
- 溶剤プリントは「フルカラーのカッティング」。シルクで作れないフルカラーの大ロットを支えてきたが、機械が高額で、カス取りとリタックに人手がかかる
- DTFは「人手のいらない溶剤プリント」。カス取りとリタックが不要になり、省人化と生産性向上を実現した。ただし歴史はまだ浅い
なぜ製法の全体像を知っておくべきか
これからプリント業を始める方はもちろん、すでに機械を触っている方でも、すべての製法の基本的な特徴を把握している方は多くありません。全体を知らないまま特定のプリント機器を買うと、「自分がやりたいこと」と「その製法ができること」が合わない、というミスマッチが起こりやすくなります。
プリント機器は、買ったあとに返品するのはとても大変です。だからこそ、購入前に各製法の得意・苦手を最低限知っておくことが大切です。

※この記事は、これからプリント業を始める方に向けた一般論です。当社は白トナープリンターと小型DTFプリンターを販売しているため、事実と客観性に努めていますが、販売店としての見方が入る部分があります。製法・機種によって例外もあります。
前編で扱う4製法の比較表
まずは全体像です。細かい説明は、このあと製法ごとに見ていきます。
| 製法 | 得意なロット | 色 | 設備投資の目安 | 活躍している場所 | 苦手なこと |
|---|---|---|---|---|---|
| シルクスクリーン | 大量生産 | 色数に制限あり(フルカラーは難しい) | 100万円〜 | 工場など大量の受注がある現場 | 小ロット、1枚ごとに違う内容、フルカラー |
| カッティング | 小〜大量 | 色数に制限あり(単色が基本) | 5万円〜 | 主にスポーツ関係(背番号など) | フルカラー、カス取りの手間 |
| 溶剤プリント | 大ロット・多品種 | フルカラー | 200万円台〜400万円台 | 看板業、大量生産のウェアプリント | 機械が高額、カス取りとリタックに人手 |
| DTF(一体型) | 中〜大ロット | フルカラー(CMYK+白) | 200万〜400万円 | 大量生産の現場 | 少量だとフィルムの無駄が出る、歴史が浅い |
※設備投資の目安は動画撮影時(2023年12月)の一般的な価格帯です。メーカー・機種・構成によって大きく変わります。
シルクスクリーン:少ない版で大量に刷る王道
ウェアプリントの王道中の王道です。昔からある製法で、ウェアプリントの半分はシルクスクリーンだと思って間違いないほど、業界を支えています。
仕組み
メッシュ状の版を作り(製版)、版の上からインクを刷って生地にプリントします。1つの版で刷れるのは1色なので、色の数だけ版と刷りの工程が必要です。6色分解などフルカラーに近づける方法もありますが、一般的にはフルカラーの表現は難しい製法です。

得意と苦手
| 得意なこと | 苦手なこと |
|---|---|
| 大量生産。1枚あたりのコストを大きく抑えられる | 小ロット。版代と手間が少ない枚数に重くのる |
| 色数の少ないデザインを、同じ版でたくさん刷る仕事 | 色数が増えるほど版も工程も増える。フルカラーは難しい |
| ブランドロゴなど、決まったデザインの量産 | 名前や番号など1枚ごとに違う内容 |
シルクのポイントは、少ない製版数(色数)で、どれだけたくさん刷れるかです。たとえば3色のデザインを1枚だけ刷るために版を3つ作ると、とても割高になります。シルクは小ロットだと割高になる、というのは業界では一般的な認識です。
設備投資と活躍している場所
シルクは1台の機械で完結する製法ではありません。製版機・印刷機(回転印刷機など)・乾燥機など、さまざまな機器と細かい道具が必要です。小さな製版キットから工場の大型設備まで幅がありますが、事業として行うなら最低でも100万円以上はかかります。製版まですべて自社で行っているところは、むしろ少ないかもしれません。
活躍しているのは、大量の受注があるグッズ製作やアパレル生産の現場です。黒いパーカーにブランドロゴ、のように、たくさんの店舗に並ぶアパレル商品は、基本的にシルクだと思って間違いありません。
※シルクスクリーンも、版代無料をうたうサービスが出てくるなど技術革新が進んでいます。「シルク=小ロットは割高」という前提も、業者によって変わりつつあります。
カッティング:版いらずで1枚から、背番号の定番
仕組み
単色のカッティングシートをカッティングマシンにセットし、デザインの形にカットします。不要な部分をピンセットで取り除く「カス取り」をしてマークシートを作り、Tシャツに置いてプレスすれば完成です。

得意と苦手
| 得意なこと | 苦手なこと |
|---|---|
| パソコンのデータから出力するので版代が不要。1枚でも割高にならない | シルクと同じく1色ずつ。フルカラーの表現は難しい(2色ならシートを重ねる) |
| シート自体が安く、単色なら割安に作れる | 細かいデザインほどカス取りの手間が増える(シルクと比べて手間がある) |
| 洗濯に強いシートが多い | シートによっては貼った感じ(張りのある肌触り)があると言われやすい |
スポーツ店さんの定番である理由
カッティングが活躍しているのは、主にスポーツ業界です。スポーツ店さんなら、ほぼ持っていると言っても過言ではありません。理由は2つあります。
1つめは背番号です。1つのチームで同じ番号は基本的にありません。シルクで刷ると番号ごとに版が必要になりますが、カッティングなら1枚から単色で割安に作れます。
2つめは洗濯の強さです。一般的なプリントの洗濯表示は40〜50度以下の水温が多いのに対し、カッティングシートには60度以下の水温に耐えられるものも多くあります。洗濯を重ねて生地がボロボロになっても、カッティングシートの表面はきれいに保たれている、というケースもあります。
※カッティングシートの性能はシートによって異なり、洗濯に弱い(はがれやすい)ものもあります。
設備投資
カッティングマシンは価格に幅がありますが、新品でも数万円(5万円程度)から導入できます。そのため、プリントを始めたばかりの方が最初の設備として使うことも多い製法です。ウェアプリントの中では、シルクの次くらいに広く使われている印象です。
溶剤プリント:フルカラーのカッティング
溶剤プリントは、簡単に言うと「カッティングでフルカラーができる」製法です。カッティングの弱点だった単色の制限がなくなり、データから出力するので版もいりません。
仕組み
溶剤インク(CMYK)でシートに印刷し、そのままカットします。印刷以降はカッティングと同じで、カス取り→リタック(転写用の台紙)を貼る→プレスで完成です。

大ロット・多品種を支えてきた王道
溶剤プリンターは、もともと看板広告や屋外ポスターの出力に使われているプリンターです。看板業の方が導入し、「ウェアプリントもできる」という流れで広まりました(最初から大量生産のウェアプリント目的で導入する方もいます)。主なメーカーは、ミマキ・ローランド・武藤工業・エプソンなどです。
強みは、長尺のシートにずっと流して印刷とカットができることです。何時間も流しておき、止めてから大人数でカス取りとリタックの貼り付けをする。シルクと違ってフルカラーに対応できるので、シルクでは作れないフルカラーの大ロット(何千枚という注文)を受けられます。ウェアプリントでは、大ロット・多品種の王道的なプリント方法でした。
得意と苦手
| 得意なこと | 苦手なこと |
|---|---|
| フルカラーで、版がいらない | 機械が高額(小〜中規模で200万円台、中規模で300万〜400万円台) |
| 長尺で連続して流せるので大ロット・多品種に強い | カス取りとリタックは人の手。大量に作るほど人手が要る |
| 看板・ポスターなど、ウェア以外の仕事もできる | 設備投資に加えて保守料もかかるため、受注がないと採算が出ない |
| 歴史が長く(10年超)、ノウハウが蓄積されている | カッティングと同じく貼った感じが出やすい |
DTFプリント:人手のいらない溶剤プリント
DTFは、溶剤プリントの進化版と考えるとわかりやすい製法です。溶剤プリントの弱点だった「カス取りとリタック」の手間をなくしたのが、一体型(大型)のDTFプリンターです。
仕組み
フィルムにCMYK+白のインクで印刷し、パウダーをつけて焼き付け、巻き取れば転写シートの完成です。パウダー付けと焼き付けが、溶剤プリントのカス取りとリタックにあたる工程で、これを機械が自動で行います。

何が革命だったのか
DTFの魅力は、突き詰めるとこれだけです。フルカラーで、手間なく大量生産ができる。これまで何人、場合によっては何十人ものパートさんでやっていたカス取りとリタックが不要になり、省人化(人件費の削減)と生産性の向上(自動化)を同時に実現しました。
もう1つの強みは、DTFのフィルムが幅広い繊維に定着することです。一般的に溶剤プリントのシートよりいろいろな素材に貼れるので、作れるグッズの幅が広がります。

価格帯は、一体型のDTFで200万〜400万円(動画撮影時)。溶剤プリンターと価格帯が変わらず、溶剤プリントと同じこともできるため、溶剤プリンターのメーカーが今は積極的にDTFを販売しています。溶剤プリントの世界では、まさにゲームチェンジでした。
得意と苦手
| 得意なこと | 苦手なこと・注意点 |
|---|---|
| フルカラー(CMYK+白の5色) | 大型の一体型は、パウダー部から巻き取りまでのフィルムが無駄になるため、1枚だけ印刷するのは不向き。中〜大ロット向き |
| カス取り・リタックが不要で省人化できる | 日本での歴史がまだ浅く(2023年12月時点で2年4ヵ月程度)、トラブル時のノウハウが少ない |
| 幅広い繊維に貼れる | 溶剤と同じく設備投資が大きく、受注量が必要 |
4つの製法はつながっている
前編の4つの製法は、ひとつ前の製法の弱点を補う形で並べると、関係がよくわかります。
| 製法 | ひとつ前の製法から何が変わったか | 残った課題 |
|---|---|---|
| シルクスクリーン | (基本の製法)版を作って大量に刷る | 版が必要、色数に制限 |
| カッティング | データから出力するので版が不要に | 単色、カス取りの手間 |
| 溶剤プリント | フルカラーに対応 | 機械が高額、カス取り・リタックの人手 |
| DTF | カス取り・リタックが不要になり省人化 | 歴史が浅い、少量だとフィルムの無駄 |
こうして基本を押さえておくと、新しい機械や製法が出てきたときに「何が新しいのか」「自分にとって価値があるのか」を自分で判断できるようになります。溶剤プリントを知らなければ、DTFの登場が革命だったことも実感できません。
残りの4製法(昇華プリント・ガーメントプリント・白トナー・刺繍)と、8製法のまとめは後編で解説しています。
よくある質問
- ウェアプリントにはどんな製法がありますか?
- 代表的なものは、シルクスクリーン、カッティング、溶剤プリント、DTF、昇華プリント、ガーメントプリント(DTG)、白トナープリント、刺繍の8つです。得意なロット、色の表現、素材、設備投資の金額がそれぞれ大きく違います。
- シルクスクリーンは小ロットに向いていますか?
- 向いていません。色の数だけ版が必要なため、数枚だけの注文や1枚ごとに違うデザインでは単価が大きく上がります。少ない版でたくさん刷る大量生産で力を発揮する製法です。
- 小ロットの設備しかないのに大量の注文が来たらどうすればよいですか?
- まずはシルクスクリーン工場への外注を考えるのがおすすめです。国内に工場がたくさんあります。大量の受注が継続して増えてから、設備導入を検討しても遅くありません。
- カッティングがスポーツの背番号によく使われるのはなぜですか?
- 版がいらず1枚から単色で割安に作れるため、番号が1人ずつ違う背番号に向いているからです。60度以下の水温に耐えるシートも多く、洗濯に強いことも理由です(シートによって異なります)。
- DTFと溶剤プリントの違いは何ですか?
- どちらもフルカラーのシートを作って生地にプレスします。溶剤プリントはカス取りとリタックが人の手で必要ですが、一体型のDTFはパウダー付けと焼き付けを自動で行い、その手間がありません。
- DTFプリンターは小ロットにも向いていますか?
- 大型の一体型はフィルムの無駄が出るため中〜大ロット向きです。2026年現在はA3の小型DTFプリンターもあり、小ロットで使う選択肢も増えています。保守料やインク消耗などの固定費も含めて検討してください。
この記事のもとになった動画
【独自解説】ウェアプリントの各製法の特徴について 前半 業者様向けプリント講座(2023年12月公開。価格は当時のもの)
昇華プリント・ガーメントプリント(DTG)・白トナー・刺繍の得意と苦手、そして8製法のまとめは【後編】ウェアプリントの製法をぜんぶ解説へ。
どの製法が自分に合うか、相談してみませんか
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オンラインでの個別説明(30分程度)も受け付けています。
※本記事の価格・実績は2026年10月時点の情報です。動画内の設備投資額は撮影時(2023年12月)の一般的な目安です。
メーカーの売り文句ではなく、現場で刷って、売って、サポートしてきた事実だけをお伝えします。


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