スウェット・トレーナー・パーカーに
フルカラープリントする方法
マット・冷まし方・剥がし方がカギ
秋冬になると、トレーナーやパーカーへのプリントの注文が増えます。ところがスウェット生地は、Tシャツにくらべてプリントが難しいとよく言われます。生地が厚く、縫い目やフードで段差ができ、裏起毛でホコリもつきやすいからです。
この記事では、白トナープリンターと抜ける転写紙タイプWで、黒のパーカー・赤とグレーのトレーナーにフルカラーでプリントした動画をもとに、プレス前の準備、プレスの条件、冷まし方と剥がし方、何ミリの線まで出るかの実験結果をまとめました。ポケットやフードなど段差のある場所へのプリントは、パーカーのポケット・フード・段差にプリントする方法で紹介しています。
- 転写マークの作り方はTシャツと同じ。違うのはマークを作ったあとの工程で、そこを少し注意すればスウェットにもフルカラーでプリントできる
- プレス前にホコリを取り、ラバースポンジマットを中に敷いて段差をなくし、事前プレスで生地を平らにする
- 本プレスは、動画ではヒートバリアマットを重ねて135℃・35秒(40秒でも可)。現在の説明書では厚手の生地は135℃・40秒が目安
- 剥がすのは10分以上冷まして完全に冷めてから。冷ますときは転写紙を下にする。剥がすときは両手の間隔をあけず、向きをこまめに変えながら
- 線の細さの実験では1mm以上ははっきり出た。ただしお客様の注文で失敗できない場合、スウェットでは2mm以上の太さがほしい
- 生地が厚く硬いほど糊が入り込みにくい。単価の高いスウェットの持ち込みは控え、安定して仕入れられるメーカーの生地で対応するのがおすすめ
スウェットが難しいと言われる理由と、今回の生地
トレーナーやパーカーへのプリントは、一般的に難しいと言われています。熱と圧力で転写する方法では、生地が厚いほど熱と圧力が届きにくく、縫い目やフード、ポケットで段差ができると、プリントしたい場所に圧力がかかりません。裏起毛の生地はホコリもつきやすく、そのまま転写するとホコリごと固まってしまいます。
今回プリントしたのは、トムス様の216-MLH 8.4オンス フーデッドライトパーカーと219-MLC 8.4オンス クルーネックライトトレーナーです。動画では「私服のスウェットにくらべると薄手の印象」と話していますが、生地への向き合い方はスウェット生地全般の参考になるとしています。

プリントしたデザインは2種類です。黒のパーカーにはグラデーションの多いフルカラーの自転車のイラスト、赤のトレーナーには細さの違う線を並べ、何ミリの線まで表現できるかを試しました。
転写マークを作る(ここはTシャツと同じ)
使ったのは、白トナープリンターで印刷する抜ける転写紙タイプWです。好きなイラストをMPシートに印刷し、糊のシート(プラスターシート)を重ねてプレスします。剥がすと印刷した部分だけに糊が付き、カッティングやカス取りをしなくても転写マークができます。


この工程は、Tシャツでもスウェットでもまったく同じです。どんなイラストでも同じ手順・同じ時間でマークが作れるのが、抜ける転写紙のよいところです。
プレス前の3つの準備
スウェットでつまずきやすいのは、マークを作ったあと、生地にプレスする工程です。動画では、プレスの前に次の3つを行っています。
① ホコリを取る
スウェット系の生地はホコリがつきやすいので、プレスの前にコロコロ(粘着ローラー)などで取り除きます。ホコリが大きいとプリントの上で目立ちます。
② ラバースポンジマットを中に敷いて、段差をなくす
パーカーやトレーナーは、縫い目などでプレス面に段差ができます。そこで、ラバースポンジマットのような弾力のあるマットを生地の中に入れて、プレスする面を平らにします。動画では「結構分厚めのマットがいい」と話しています。フードは作業台から下に落としておきます。

マットを入れたら、生地を自然に伸ばしてからプレスします。引っ張りすぎたり、しわが寄ったままだと、プレスで変な折り目がつきます。
③ 事前プレスで生地を平らにする
転写マークを乗せる前に、生地だけを1回プレスして平らにします。動画では130℃・10秒程度です。マットと生地が入って厚みが出るので、圧力は強めにしてしっかり押さえます。

※タイプWの商品ページでも、綿の生地は事前プレスで毛羽立ちを抑えるよう案内しています。ラバースポンジマットは厚さ約3mmでM(22×32cm)・L(32×44cm)などのサイズがあり、より大きな段差には厚さ約8mmのラバークッションもあります。
本プレス:ヒートバリアマットを重ねて
事前プレスが終わったら、転写マークを乗せて本プレスします。このとき動画では、ヒートバリアマットを上に重ねています。熱板の凸凹による圧力のムラを減らし、より圧力をしっかり加えられるマットです。
ヒートバリアマットには断熱効果があるので、温度と時間を上げます。動画撮影時は通常130℃だったところを135℃に上げ、時間は35秒くらい(35〜40秒でもよい)でプレスしました。

| 工程 | 動画(2020年10月撮影) | 現在の説明書の目安 |
|---|---|---|
| 糊付け(MPシート+プラスターシート) | 130℃・表裏30秒・強圧 | 135℃・強圧/A4は表裏20〜30秒、A3は表裏30〜40秒 |
| 事前プレス(生地だけ) | 130℃・10秒程度 | 綿の生地は事前プレスで毛羽立ちを抑える |
| 生地への転写 | ヒートバリアマットあり:135℃・35秒(40秒でも可) | 綿のTシャツは135℃・20〜30秒、スウェットなど厚手は135℃・40秒 |
| ヒートバリアマットを使うとき | 通常の130℃から135℃に上げ、35秒(40秒でも可) | 通常より5℃ほど高く、時間も5〜10秒ほど長く |
| 仕上げプレス | 剥がしたあとに仕上げプレス | リケイ紙を乗せて135℃・15〜20秒 |
※条件はプレス機や生地で変わります。最初は同じ生地で1枚試してから本番に入ってください。生地ごとの温度と時間は白トナープリントのプレス温度と時間にまとめています。
冷まし方と剥がし方
スウェットでいちばん差が出るのが、ここです。動画では「冷まし方」と「剥がし方」の両方を細かく見せています。
冷ますときは、転写紙を下にする
プレスが終わったら、すぐには剥がさず冷まします。動画では10分以上置き、完全に冷めてから剥がしました。
このとき、多くの方は転写紙を上にしたまま冷ましますが、動画のおすすめは生地を裏返して、転写紙を下にして冷ますことです。プレスしていない部分が冷めてくると、生地が少し反ってくるためです。これはトレーナーやパーカーに限らず、普通のTシャツでも同じです。

剥がすときの4つのポイント
- イラストのエッジ(角)を避けて、丸みのある部分から剥がし始める
- 最初に剥がしやすい場所を探る
- 左手と右手の間隔をあけずに剥がす。片手で生地を押さえ、もう片方の手で紙を剥がす。引っ張るのではなく、生地が伸びないように
- 紙を剥がす向きもこまめに変える


剥がし終わったら、仕上げプレスをして完成です。黒のパーカーには、グラデーションの多い自転車のイラストがきれいにプリントできました。動画では、イラストの中のいちばん細いところをスケールで測ると約1mmで、その細さも出ていると説明しています。

※冷ましてから剥がす方法や、生地を伸ばさない剥がし方は、現在のタイプWの商品ページでも案内しています。4辺の切り方や剥がし方の失敗例は抜ける転写紙の4辺の切り方・冷まし方・剥がし方とよくある失敗も参考にしてください。
何ミリの線まで出るか(実験)
同じやり方で、赤のトレーナーに0.5・0.75・1.0・1.5・2・3・4mmの線を並べてプリントしました。こちらも完全に冷ましてから剥がしています。

結果は、1mm以上の線ははっきり出ました。0.5mm・0.75mmは、出ている線もあれば、出きっていない線もありました。動画では、撮影当時タイプWは1mm以上が推奨なので、それより細い線は「基本的にはできなくて当然」で、出たものもある、という受け止め方をしています。
そのうえで、お客様からデータを受けて作る業者様は、線が途切れるリスクを防がなければなりません。剥がしやすさも考えると、スウェット系では2mm以上の太さがほしい、というのが動画の結論です。
- 2mm以上:お客様の注文で使うならこの太さ。剥がしやすく、途切れるリスクが小さい
- 1〜1.5mm:今回の実験でははっきり出た。ただし圧力などの条件で差が出ることがある
- 1mm未満:出る線もあるが、安定しない。受注品には使わない
生地が厚く硬いほど難しくなる理由
今回の8.4オンスのトレーナー・パーカーは、タイプWとの相性が良好という印象でした。一方で動画では、生地の厚みはプリントのしやすさに影響すると話しています。基本的には、薄いほどプリントしやすくなります。
理由は、タイプWが生地に付く仕組みにあります。
- プレスの熱で糊が溶けながら、繊維の奥に入り込んで付く
- 完全に冷めると糊が固まり、繊維の上に定着する
ところが、硬い生地(分厚い生地)は繊維が密集していて、糊が入り込んでいくすき間が少なくなります。糊が奥に押し込まれないと、剥がしたときに糊が生地ではなく紙のほうに残ってしまいます。

動画では、私服で着るような分厚いトレーナー・パーカーは「難しいかもしれない」と話しています。撮影当時(2020年10月)のテロップでは、スウェットは10オンスが最大と紹介し、今回より厚い生地の検証は次回に持ち越すとしています。
向かないケースと注意点
よくある質問
- スウェット(トレーナー・パーカー)にも白トナー転写でフルカラープリントできますか?
- できます。動画ではトムス様の8.4オンスのトレーナー・パーカーに、抜ける転写紙タイプWでフルカラーの自転車のイラストをプリントし、細かいグラデーションまできれいに出ました。転写マークの作り方はTシャツと同じで、生地にプレスする工程(マットの敷き方・事前プレス・冷まし方・剥がし方)を少し注意するのがポイントです。
- スウェットに転写するときの温度と時間は?
- 現在のタイプWの説明書では、スウェットなど厚手の生地は135℃・40秒が目安です(綿のTシャツは135℃・20〜30秒)。剥がしたあとはリケイ紙を乗せて135℃・15〜20秒で仕上げます。動画(2020年10月撮影)ではヒートバリアマットを重ねて135℃・35秒でプレスしていました。ヒートバリアマットを使う場合は、通常より5℃ほど高く、時間も5〜10秒ほど長くします。
- プレスのあと、すぐに剥がしてもいいですか?
- すぐには剥がさず、完全に冷めてから剥がします。動画では10分以上冷ましました。冷ますときは生地を裏返して転写紙を下にすると、プレスしていない部分が冷めて生地が反るのを防げます。これは普通のTシャツでも同じです。
- 何ミリの線まできれいに出ますか?
- 赤のトレーナーに0.5〜4mmの線をプリントした実験では、1mm以上の線ははっきり出ました。0.5mm・0.75mmは出る線と出きらない線がありました。お客様の注文で失敗が許されない場合は、スウェットでは2mm以上の太さをおすすめします。
- お客様が持ち込んだスウェットにもプリントできますか?
- おすすめしません。スウェットは1枚あたりの単価が高く、生地の厚さや硬さによってはうまく付かないことがあるため、保証の面から持ち込みの対応は控えたほうが無難です。安定して仕入れられるプリントメーカーのスウェット生地を使い、事前にテストしてから受注してください。
この記事のもとになった動画
【秋冬の定番】スウェット生地にフルカラープリントする方法を説明します トレーナー パーカー(2020年11月9日公開。2020年10月撮影、温度・時間は当時のもの)
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※動画内の温度・時間(糊付け130℃・表裏30秒、事前プレス130℃・10秒、転写135℃・35秒)は2020年10月の撮影当時のものです。現在の条件はタイプWの説明書・商品ページ(2026年10月時点)に従ってください。
メーカーの売り文句ではなく、現場で刷って、売って、サポートしてきた事実だけをお伝えします。


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