洗濯堅牢度は
「剥がれにくさ」ではありません
プリント業者が知っておきたい、洗濯堅牢度試験の本当の意味
記事公開:2026年10月 / もとの動画:2024年10月公開(試験の考え方は現在も変わりません)
「洗濯堅牢度5級」と聞くと、多くの方は「洗濯してもプリントが剥がれない」という意味に受け取ります。
でも、試験の中身を見ると、そうではありません。プリント業者様が本当に知りたい「剥がれるか、剥がれないか」は、この試験では分からないのです。
洗濯堅牢度試験(JIS L 0844)は、生地の色落ち(変退色)と、ほかの衣類への色移り(汚染)を見る試験です。プリントの剥がれや割れを見る試験ではありません。
転写プリントの剥がれを、客観的な等級で出すJISの基準はありません。だから剥がれるかどうかは、実際に洗濯機で洗って確かめるのがいちばん確実です。
当社の国産・抜ける転写紙は、洗濯堅牢度試験で上級(5級)の成績と、洗濯機での実証の両方をそろえてご案内しています。
【解説】プリント業者様に知って欲しい洗濯堅牢度試験の意味(14分24秒)
01 洗濯の伝え方=お客様に洗濯の注意をどう案内するか / 02 洗濯堅牢度(このページ)=試験の等級は何を意味しているか / 03 汗と着心地=汗をかいたとき、プリント部分の着心地はどうか
洗濯堅牢度=剥がれ試験、ではありません
プリント業者様が気になるのは、転写したものが剥がれるか、割れるかだと思います。ところが「洗濯堅牢度◯級」という数字は、その答えにはなっていません。これからTシャツプリントを始める方はもちろん、すでに販売している業者様も、実際とは少し違う意味で受け取っていることが多いように感じます。
試験をしている試験所は、いくつもあります
洗濯堅牢度試験を受けられる試験所は、カケンテストセンター、東京都立産業技術研究センターなど、検索するだけでも複数出てきます。試験所によってやり方や厳しさが違う可能性もあり、展示会では、特に厳しい洗濯テストを行っている専門業者さんにも出会いました。
ほとんどの試験所は規格(JIS)に沿って試験をしています。成績を見るときは、何級かだけでなく「どの規格の試験か」もチェックポイントです。ここでは、当社がふだん依頼しているカケンテストセンターの試験をもとに説明します。
※ 試験の詳細は、各試験所へ直接お問い合わせください。
JISとは
JISは日本産業規格(Japanese Industrial Standards)の略で、日本の産業製品に関する規格や測定法などを定めた国家規格です。ウェアプリントでいちばん身近なJISは、Tシャツのタグについている洗濯表示です。
洗濯堅牢度試験(JIS L 0844)は、何を見ているのか
家庭での洗濯の作用による「色の変化の程度(変退色)」と、「ほかの洗濯物への色移りの程度(汚染)」を評価する試験です。


試験の手順
| 工程 | 内容 |
|---|---|
| 試験の種類 | A-1号=洗濯温度40℃、A-2号=洗濯温度50℃ |
| 1. 試験片をつくる | 試験片に添付白布(色移りを見るための白い布)を重ねて「複合試験片」にする |
| 2. 洗う | ステンレスの洗濯瓶に入れ、40℃に予熱した0.5%石けん液を100mL投入。洗濯試験機で30分 |
| 3. すすぐ | 取り出して、25℃の水100mLで1分間の水洗いを2回 |
| 4. 乾かす | ろ紙などで脱水し、60℃以下の乾燥機で乾燥 |
| 5. 判定 | グレースケールを使って、変退色と汚染の等級を判定 |


手順を見ると分かるとおり、洗濯機で何十回も回して、プリントの状態を見る試験ではありません。決まった条件で1回洗い、色の変化と色移りを見る試験です。
等級の見方
等級は1〜5級で、5級がいちばん良い成績です。「4-5級」のような中間の等級もあります。
| 目安 | 内容 |
|---|---|
| 一般的な目安 | 変退色は4級、汚染は3級が目安と記載されています |
| 納品先による基準 | 百貨店に納品するには4級以上が欲しい、と聞いたことがあります |
| 5級と4-5級 | 試験を出した間隔の中で、微妙な差で評価されています |
※ 目安や基準は、試験所・納品先によって異なります。
では、プリントの剥がれを見る試験はあるのか
洗濯堅牢度試験でも、プリントが薄くなるなどの「脱色」から洗濯の強さはある程度分かります。では、転写したプリントの洗濯への影響を測る試験はあるのでしょうか。試験所に聞いてみました。
あるのは、摩耗や、条件を決めた繰り返し洗濯


でも、剥がれを客観的な等級にする基準はない
試験所としては、転写したプリントの破損具合を、客観的な等級で出すことはできないとのことでした。剥がれ具合を数値にするのが難しく、JISに客観的な剥がれの評価基準がないからです。
クラフトテープをプリントにたとえると分かりやすいです。端が少しめくれたら「剥がれ」でしょうか。半分めくれたら? どこからを何級とするかは、見る人によって変わってしまいます。
剥がれの基準は、納品先が決めている
条件を決めた試験で、プリントの破損に等級をつけること自体はできます。ただしそれは、たとえば次のような流れです。
- プリントしたものを、大手の納品先に収めたい
- 納品先から「この条件で、試験所でテストしてください」と指定される
- 納品先が主観で決めている基準で、等級が出される
つまり、剥がれに対する基準は、納品先ごとに違うのが当然です。テレビCMの洗剤や漂白剤でも「当社調べ」と書いてあります。プリント部分の剥がれや割れに限定した、共通のテストはないようです。
剥がれるかどうかは、実際に洗って確かめる このページの核心
剥がれや破損は、等級では表れません。だから実際の洗濯機で洗って、結果を見るのがおすすめです。写真は、WTRIP835でプリントし、家庭の洗濯機で30回ほど洗濯したものです。
導入前は、サンプルを洗う
導入を検討しているなら、販売会社からサンプルをもらって、自分の洗濯機で洗ってみるのがいちばんです。
成績と実証の、両方を見る
当社は、洗濯堅牢度試験での上級の成績に、洗濯機での実証を加えて、良いものをご案内しています。
同じ条件で比べてもらう
複数のプリントを比べたいときは、試験所で同じ条件で洗濯して結果を教えてもらうこともできます。試験所にご相談ください。
→ 洗濯機で洗ったときの注意点と、お客様への伝え方は「01 プリントTシャツの洗濯、お客様にどう伝えるか」で、漂白剤・タンブラー・直接アイロンを実際に試した結果とあわせて紹介しています。
当社の国産・抜ける転写紙は、洗濯堅牢度でJIS 5級の成績が出ています。ただしこれは当社の転写紙の成績です。同じ白トナープリンターで使う転写紙でも、海外製は樹脂や糊の設計が違い、同じ成績・同じ洗濯耐久になるとは限りません。試験成績が示されていないこともあります。比べるときは、①何の規格で何級か ②実際に洗濯機で洗った結果の2つをそろえて確認してください。
→ 国産“抜ける転写紙”と海外製転写紙の違い
剥がれのトラブルは、まず使い方から見直す
「洗濯は大丈夫ですか?」という問いに、洗濯堅牢度試験の結果だけでは物足りない——プリント業の方と話していると、そう感じることがあります。たとえば、カッティングプリントで洗濯したら全体が剥がれてしまったという話は、何件か聞いたことがあります。相談を受けると、洗濯堅牢度の話が出てきます。
剥がれた原因は、使い方や作業手順の問題である可能性もあります。
剥がれが出たときは、まず正規の方法で、圧力・温度、生地との相性が大丈夫かを確認して、いろいろな不具合の可能性を探ってみてください。プレスの圧力が足りないと、どの製法でも洗濯で落ちます。
製法によって、洗濯堅牢度の重みは違う
| 製法 | 洗濯堅牢度試験の位置づけ |
|---|---|
| ガーメント(DTG)・昇華プリント | インクで生地を染めていく一面があるので、色落ち・色移りを見るこの試験の評価は重要 |
| 転写プリント(カッティング・溶剤・DTF・白トナーなど) | 等級だけでは剥がれ・割れが分からない。等級以外の情報(実際の洗濯結果)も欲しい |
なお、世の中に流通しているプリント商品で、すぐに剥がれるようなものは多くないと感じます。評判の悪い商品は淘汰されていくからです。だからこそ、正しい作り方で、実際に洗って確かめた結果が、いちばんの説得力になります。
このページのまとめ
- 洗濯堅牢度試験(JIS L 0844)は、生地の色落ち(変退色)と色移り(汚染)を見る試験
- プリントの剥がれ・割れを見る試験ではない
- 試験は決まった条件で洗い、グレースケールで1〜5級を判定する。5級が最良
- 剥がれを客観的な等級で出すJISの基準はない。基準は納品先ごとに違う
- 剥がれるかどうかは、実際に洗濯機で洗って確かめる。導入前はサンプルを洗う
- 当社の国産転写紙はJIS 5級。海外製は同じ成績とは限らないので、成績と実洗濯の両方で比べる
- 剥がれのトラブルは、まず圧力・温度・生地との相性を見直す
よくある質問
「洗濯堅牢度5級」なら、洗濯しても剥がれませんか?
洗濯堅牢度は、生地の色落ちと他の衣類への色移りを見る試験なので、5級だから剥がれないとは言えません。剥がれに強いかどうかは、実際に洗濯機で洗って確かめるのが確実です。当社の国産転写紙は、5級の成績に加えて、洗濯機での実証もしています。
プリントの剥がれを試験所で測ってもらうことはできますか?
摩耗強さ・もみ試験(JIS L 1096)や、条件を決めた繰り返し洗濯の評価を依頼できる場合があります。ただし、剥がれ具合を客観的な等級で出すJISの基準はないため、等級をつけるときは納品先などが決めた基準によることになります。詳細は試験所へお問い合わせください。
変退色と汚染は、何級あれば十分ですか?
変退色4級・汚染3級が目安と記載されています。百貨店などへの納品では4級以上が求められることもあると聞きます。基準は納品先によって違うので、事前に確認してください。
海外製の白トナー用転写紙も、5級なのでしょうか?
同じとは限りません。JIS 5級は当社の国産転写紙の成績です。海外製の転写紙は設計が違い、試験成績が示されていないこともあります。どの規格で何級か、実際に洗った結果はどうか、の両方を確認してください。
お客様から「洗濯は大丈夫?」と聞かれたら、どう答えればいいですか?
等級の数字だけで答えるより、「実際に洗濯機で何回洗っても問題なかったか」をお伝えするほうが伝わります。あわせて、漂白剤・タンブラー・直接アイロンなどの注意点を紙でお渡しすると安心です。伝え方は「01 洗濯の伝え方」で紹介しています。
メーカーの売り文句ではなく、現場で刷って、売って、サポートしてきた事実だけをお伝えします。


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