コーチジャケット・
ベンチコートに、
白トナーでフルカラープリント
肌寒い季節になると、毎年「コーチジャケットにプリントできますか?」というご質問をいただきます。裏地にボアが付いたナイロン系のアウターは、スポーツチームや団体のユニフォームとしてよく使われる定番アイテムですが、プリントしている様子を紹介した動画はほとんどありませんでした。
この記事では、当社の東京ショールームで表地がポリエステルのものとナイロンのもの、2着のコーチジャケットに、白トナープリンタと抜ける転写紙タイプWでプリントした実演をもとに、手順と温度、撥水の確かめ方、裏地付きアウターならではの注意点をまとめました。
- コーチジャケット(ベンチコート)にも、白トナー+抜ける転写紙タイプWで1枚から白を含むフルカラーでプリントできる
- 動画のジャケットは注意書きでインクジェット(ガーメント)プリントに対応していないボディ。小ロットのフルカラーでは、白トナーが活躍できる場面
- ナイロンやポリエステルは低温が基本。動画ではボディの推奨(120℃以下)に合わせて115℃・約20秒でプレスした
- 「撥水あり」でも諦めない。水をかけて弾き方を見る、仕入れ先に撥水の強さと転写の実績を確かめる
- 生地が薄いジャケットは、糊が裏に突き抜けて裏地とくっつくことがある。プレス直後に表地と裏地を離す
コーチジャケットに白トナーが向いている理由
今回のジャケットの取り扱い注意には、「前処理剤の定着が悪いため、インクジェットプリントに対応していない」と書かれていました。生地にインクを直接吹き付けるガーメントプリントでは、プリントが難しいボディだということです。
白トナープリントは、白トナープリンタで抜ける転写紙に印刷して転写マークを作り、プレス機で生地に転写する方法です。前処理剤を使わず、濃い色の生地にも白を含むフルカラーでプリントできます。動画では、小ロットでコーチジャケットにフルカラーでプリントするなら、白トナープリントが「唯一?」の方法かもしれない、と控えめに紹介しています。白トナープリンタをお持ちの方なら、秋冬にこうしたアウターの注文に応えられます。
抜ける転写紙タイプWの商品ページでも、対応生地は綿・ポリエステル・ナイロン(強撥水の生地は不可)と案内しています。
実演に使った2着のジャケットと注意書き
動画では、United Athle(キャブ株式会社)のコーチジャケット2品番を使いました。
| 品番 | 生地(動画での説明) | 撮影時の状況 |
|---|---|---|
| 7482-01 | 表地ポリエステル、裏地ボア。撥水あり(メーカーの担当者によると、熱転写ができる弱撥水) | 在庫限りで廃番予定 |
| 7492-01 | 表地ナイロン、裏地付き | 撮影時の現行品 |
7482-01の注意書きには、「ポリエステル素材のため、熱加工は120℃以下を推奨。120℃以下でもブリード(生地の色が浮き出ること)を起こすことがある」とありました。そこで動画では、抜ける転写紙でプリントできる低めの温度として、115℃でプレスしています。
※品番・在庫の状況は動画撮影時のものです。2026年10月時点の取り扱いは、仕入れ先でご確認ください。
転写マークを作る
まず白トナープリンタ(WTRIP835)で、抜ける転写紙タイプWのMPシートに、デザインを左右反転で印刷します。WTRIP835はA3サイズまで印刷できます。

印刷したMPシートとプラスターシート(糊のシート)を重ねて、プレス機で表裏をプレスし、剥がします。すると印刷した部分にだけ糊が付き、カッティングもカス取りもいりません。


| 工程 | 動画撮影時の実演 | 2026年10月時点の案内 |
|---|---|---|
| 糊付け | 130℃・30秒・表裏 | 135℃・強圧。A4は表裏20〜30秒、A3は表裏30〜40秒。時間は調整してよいが温度は変更しない |
| 材料費 | タイプW A4の2枚セットで300円 | A4 1枚あたり約374円(タイプW 341円+印刷代33円・税込) |
※動画撮影時の価格はテロップの表記(税別・税込の記載なし)のままです。タイプWの作業条件は2023年6月に変わっています。くわしくは「タイプWの作業の変更点」をご覧ください。
プリントの前に撥水を確かめる
撥水加工のある生地では、撥水が強いとマークが生地の奥に入らず、うまく転写できません。そこで動画では、プリントする前にジャケットに水をかけて、撥水の具合を確かめています。今回のジャケットは水を少し弾くものの、撥水のレベルは強くありませんでした。

動画のまとめでは、注意点の1つ目として撥水を挙げています。
- 「撥水あり」だからできない、とは考えない。ほとんどの生地には「撥水あり」としか書かれていないので、撥水の強さを知ることが大事
- 撥水の強さと、これまでの転写の実績を、仕入れ先のメーカーの担当者に確認する。ネット上の商品ページには載っていないことが多い
- 今回のジャケットも担当者に確認したところ、「弱撥水で、これまでの実績からおそらく大丈夫」との答えで、実際に問題なく仕上がった
撥水が微妙な生地を、エタノールで拭いて一時的に撥水を弱めてからプリントする方法は「ナイロンブルゾン・選挙ジャンパーにフルカラープリントする方法」で紹介しています。雨合羽のような強撥水の生地は、タイプWではプリントできません。
位置決めとプレス
位置決めは作業台の上で
ジャケットにマークの位置を決めてからプレスします。動画では、平らな作業台の上で位置を決め、次のどちらかの方法で留めてからプレス機に移す方法を紹介しています。
- 耐熱テープでマークを留める
- 家庭用アイロンで軽く押さえて仮止めする(アイロンとマークの間には当て紙を入れる)

仮止めしておけば、ジャケットを持ち上げてもマークが動かないので、あとはプレス機の台にのせてしっかりプレスするだけです。反対に、プレス機の台の上で位置を決める方法はおすすめしません。ジャケットのような大きな衣類では、真ん中に合わせるのが難しくなるためです。
低温でプレスし、冷めてから剥がす

動画では115℃・約20秒でプレスし、完全に冷めてから転写紙を剥がしました。カメラのアングルの都合で腰を伸ばしてゆっくり剥がしていますが、実際には目の下で剥がすとスムーズだと補足しています。剥がしたら、最後に仕上げプレスをして、生地の奥になじませます。


| 工程 | 動画撮影時の実演 | 2026年10月時点の案内 |
|---|---|---|
| 生地への転写 | 115℃・約20秒(ボディの推奨120℃以下に合わせた) | 説明書の条件は綿のTシャツを想定した設定。ポリエステル生地は125℃・15秒など、生地に合わせて調整するよう案内 |
| 冷まして剥がす | 5分以上置いて、完全に冷めてから | 10分以上置いて、完全に冷めてから裏紙を慎重に剥がす |
| 仕上げプレス | あり(時間の説明なし) | シリコン紙をのせて仕上げプレス |
※ボディの注意書きが説明書の温度より低い温度を推奨している場合は、端切れや目立たない所で試してから本番に入るか、当社にご相談ください。素材別の温度の考え方は「白トナープリントのプレス温度と時間」で紹介しています。
ナイロン表地の7492-01と、フルカラーの柄
続いて、撮影時の現行品で表地がナイロンの7492-01にも、同じタイプWでプリントしました。プレスして冷めてから剥がすと、こちらも問題なくプリントできました。剥がしたあと少し残った所も、爪でこするくらいで取れたと説明しています。

動画のまとめでは、ナイロンやポリエステルは基本的に低温がおすすめだと話しています。ナイロンは熱で縮むため、別の動画ではマークをのせる前に生地だけを先にプレスして縮ませておく事前プレスを紹介しています(「ナイロンブルゾンにフルカラープリントする方法」)。
ロゴだけでなく、写真のようなフルカラーの柄も表現できます。下は7482-01にタイプWでプリントしたものです。こうしたカラフルな1枚ものを作るのは、ガーメントプリントのできないボディでは難しく、白トナープリントの汎用性が活きる場面だと動画では話しています。

裏地付きアウターの注意点:糊の突き抜け
2つ目の注意点は、裏地が付いたアウターならではのものです。プレスの熱と圧力で、マークの糊が表地の裏側まで突き抜け、裏地(ボアなど)と表地がくっついてしまうことがあります。

今回の2着は冬用で、表地が厚めのポリエステル(7482-01)や、厚みのあるナイロン(7492-01)だったため、糊ははみ出さず、裏地とくっつくことはありませんでした。

生地が薄いジャケットでは、プレスした直後に表地と裏地を引き離してください。そうすれば、くっついたまま固まることを防げます。2026年10月時点のタイプWの商品ページでは、糊が突き抜けるほど薄い生地には、糊の薄いタイプWLを案内しています(「抜ける転写紙タイプWLの特長と使い方」)。
| 確かめること | やること |
|---|---|
| 撥水の強さ | 水をかけて弾き方を見る。仕入れ先の担当者に、撥水の強さとこれまでの転写の実績を確認する |
| 推奨温度 | ボディの取り扱い注意を読む。低温の推奨がある場合は、試してから本番へ |
| 生地の厚み | 薄いジャケットは、プレス直後に表地と裏地を離す。糊が突き抜けるほど薄ければタイプWLを検討 |
向かないケースと、この記事の注意点
撥水の強さ・耐熱温度・生地の厚みは、メーカーや品番、同じ品番でも生産時期によって違うことがあります。動画で問題なくプリントできたのは、動画で使った2品番での結果です。新しいボディで受注するときは、お試しの転写紙で1着試してから本番に入ることをおすすめします。
また、動画では比較のために、現在の業務用の転写紙一覧に載っていない転写紙でも試していますが、この記事では現行のタイプWの内容だけを紹介しています。プレスの温度・冷ます時間は、お手元の商品に入っている説明書を優先してください。
よくある質問
- コーチジャケットやベンチコートに、白トナーでフルカラープリントできますか?
- できます。動画では、表地がポリエステルで裏地がボアのコーチジャケット(United Athle 7482-01)と、表地がナイロンのコーチジャケット(United Athle 7492-01)に、白トナープリンタと抜ける転写紙タイプWでフルカラーのロゴをプリントし、どちらも問題なく転写できました。ただし撥水の強い生地はプリントできないため、ボディごとに撥水の強さを確かめてください。
- 撥水加工のあるジャケットはプリントできませんか?
- 「撥水あり」と書いてあるだけで諦める必要はありません。大事なのは撥水の強さです。動画のジャケットは、メーカーの担当者に確認したところ熱転写ができる弱撥水のものでした。生地に水をかけて弾き方を確かめ、仕入れ先の担当者に撥水の強さと、これまでの転写の実績を確認するのがおすすめです。雨合羽のような強撥水の生地は、タイプW・WLともプリントできません。
- プレスの温度は何℃にすればいいですか?
- 動画では、ジャケットの注意書きが「120℃以下での熱加工を推奨(120℃以下でもブリードを起こすことがある)」だったため、115℃・約20秒でプレスしました。現行のタイプWの説明書はポリエステル生地で125℃・15秒を目安としていますが、ボディの注意書きがそれより低い温度を推奨している場合は、端切れや目立たない所で試してから本番に入るか、当社にご相談ください。
- プレス機の上で位置を決めてはいけないのですか?
- ジャケットのように大きな衣類では、プレス機の台の上でマークの位置を決めると、真ん中に合わせるのが難しくなります。動画では、平らな作業台の上で位置を決め、耐熱テープで留めるか家庭用アイロンで軽く仮止めしてから、プレス機に移してプレスする方法をすすめています。
- 裏地付きのジャケットで気をつけることは?
- 生地が薄いと、プレスの熱で糊が表地の裏側まで突き抜け、裏地とくっついてしまうことがあります。動画の2着は冬用で生地が厚く、突き抜けはありませんでしたが、薄いジャケットではプレスした直後に表地と裏地を離してください。糊が突き抜けるほど薄い生地には、糊の薄いタイプWLが案内されています。
- 転写マーク1枚の材料費はいくらですか?
- 動画撮影時は、抜ける転写紙タイプWがA4の2枚セットで300円でした。2026年10月時点では、WTRIP835の商品ページでA4 1枚あたり約374円(タイプW 341円+印刷代33円・税込)と案内しています。
この記事のもとになった動画
白トナープリンタでコーチジャケット(ベンチコート)にオリジナルプリントする方法(動画公開当時の内容・価格・品番。プレス条件は撮影時のもの)
お手持ちのジャケットで、試してみませんか
抜ける転写紙はA4のお試しセットからご購入いただけます。白トナープリントの無料サンプルもお送りしています。
東京・大阪・福井のショールームでは、ナイロンやポリエステルへのプリントも実演でご覧いただけます(完全無料・要予約)。
※ジャケットの品番・生地・在庫の状況、プレス条件、転写紙の価格は動画撮影時の内容です。現在の作業条件・価格は2026年10月時点の商品ページと説明書の情報です。
メーカーの売り文句ではなく、現場で刷って、売って、サポートしてきた事実だけをお伝えします。


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